一般建設業許可と特定建設業許可の違いとは?

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一般建設業と特定建設業の違い

建設業とは、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。建設業を営もうとする者は、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する者以外は、建設業の許可を受けなければなりません。

建設業の許可とは下請契約の規模により「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分された許可のことです。

「特定建設業」の許可は、元請業者として工事を完成させるための高度な技術と経験を必要とし、下請業者を指揮監督する立場にあるためその要件が厳しく定められています。

また、令和5年1月1日建設業法施行令の一部改正により特定建設業許可や技術者の専任配置要件の見直しが行われました。

今後も許可基準等については社会経済情勢に応じた見直しが行われますので法改正情報には注意が必要です。

それでは、一般建設業と特定建設業の違いについて詳しく見ていきましょう。

一般建設業と特定建設業の違いは許可要件の難易度

一般建設業と特定建設業

一般建設業と特定建設業の区分は下請契約の金額により異なります。元請・下請共に必ず必要となる許可は一般建設業の許可です。

下請契約の金額により元請業者のみ必要となる許可が特定建設業の許可です。一般的に、個人事業主や小規模企業は一般建設業許可の取得することになるでしょう。

  • 一般建設業とは下請け業者も必要
  • 特定建設業とは元請業者のみ必要

一般建設業と特定建設業のどちらも発注者から請け負うことができる金額に制限はありません。

一般建設業とは下請け業者も必要な営業許可

建築業の許可票

「軽微な建設工事」のみ請け負って営業する場合を除き、建設業を営もうとする者は、元請・下請を問わず一般建設業の許可の取得が必要となります。

軽微な建設工事とは下記の工事を指します。

  • 建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
  • 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

下請け業者だから許可が要らないわけではありません。軽微な工事にあたらなければ、すべての業者に取得が必要とされる許可が一般建設業の許可になります。

500万円以上の工事が請け負える

一般建設業の許可を受ければ、より大きな工事を受注することが可能になります。

例えば、建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円以上、建築一式工事については1500万円以上の工事を受注することも可能となります。

また、建設業の許可を取得することにより、公共工事の受注も可能になりますので、受注案件の幅が広がります。

特定建設業とは元請業者のみ必要な営業許可

特定建設業の許可は、元請業者にのみ取得が必要とされる許可です。元請業者として下請業者へ一定額以上の下請契約をする際に許可が必要となります。

具体的には、元請業者が発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額 が4500万円以上(建築一式は7000万円以上、いずれも消費税及び地方消費税を含む)となる下請契約を締結して施工する場合です。必要となるのはあくまでも元請業者のみです。

また、下請代金の額については複数の下請け契約がある場合は合算された金額となります。

下請業者に4500万円未満(建築一式は7000万円未満、いずれも消費税及び地方消費税を含む)の金額で契約する場合や、自社で施工を完結させる場合には許可は必要となりません。

令和5年1月1日の改正によりこれまでの基準が変更されています。

改正前改正後
4000万円以上4500万円以上
建築一式工事の場合は7000万円以上建築一式工事の場合は7500万円以上

今後も、基準が変更される可能性があるため最新情報をチェックしておきましょう。

社会的信用度が上がり融資も受けやすくなる

建設業の許可は、営業所の設置形態により、国土交通大臣の許可や都道府県知事の許可が必要となります。いずれも許可要件に沿った厳格な審査がなされます。

許可を取得することは審査に通った証明になりますし、許可要件の一つ「請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること」を満たした証明にもなります。

特に特定建設業の許可においてはより厳しい審査基準が適用されます。

下請業者への支払いの遅延などがないように財政基盤が厳しく審査されますので、融資においてもプラスに働く要素になりえます。

また日本政策金融公庫での「新創業融資制度」に必要とされる書類には「許可・届出等が必要な事業を営んでいる方」の書類として「許認可証のコピー」が求められています。

許可取得の難易度が高く時間がかかる

許可申請に必要な手引きなど情報の入手や申請内容の理解、多岐にわたる必要書類を取得する手順、申請書への記入など膨大な時間と労力が必要となります。

また必要書類の中には提出時点での発行期限を求める書類も多数ありますし、法改正などにより要件の変更などにも注意が必要です。

通常申請前の準備時間と審査機関による審査完了までの時間を許可取得までの時間として見積りますが、審査主体により1.5ヶ月~4ヶ月程度かかります。

書類を揃えていくだけでも労力がかかりますので、その後の申請書作成・申請までの段取りについては申請のプロに依頼することをお勧めします。

一般建設業と特定建設業は取得要件が異なる

一般建設業と特定建設業は取得要件が一部異なりますが、特定建設業については下請業者保護や受注案件の規模が大きくなるため要件が厳しく設定されています。

一般建設業に必要な4つの要件と欠格要件

一般建設業に関連する要件は下記のとおりです。

  • 適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること。(建設業法施行規則第7条第1号、第2号)
  • 営業所ごとに「専任技術者」を配置していること。
  • 暴力団関係企業等、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
  • 請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること。
  • 欠格要件に該当しないこと

それぞれ詳しく見ていきましょう。

適正な経営体制を有する

「適正な経営体制を有する」とは、経営業務の管理責任者を設置していることを指します。

これは建設業の経営が他の産業の経営とは著しく異なる特徴を有するため、適正な業務運営のため必要とされる要件です。

取締役や事業主など、一定の立場で建設業の経営を5年以上(一部補助業務について6年以上)の実務経験を有する者等がこれに該当します。

「適切な社会保険に加入している」とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険等の各種社会保険に関して適用事業の事業所に該当するすべての事業所について加入することが要件となっています。健康保険・厚生年金保険について、株式会社は基本的に加入が必須です。

専任技術者の配置

「営業所ごとに専任技術者を設置する」とは、一定の資格または経験を有した者を営業所ごとに設置する要件です。

建設工事に関する請負契約の適正な締結をするためには専門の知識が必要とされます。

見積、入札、請負契約等の建設業の業務は各営業所で行われることから、各営業所での設置が義務付けられています。

一般建設業の許可取得の場合の専任技術者の概要は下記のとおりです。

  • 指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務経験を有する者
  • 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
  • 許可を受けようとする建設業に関する建設工事に関して、10年以上実務経験を有する者
  • 国家資格者(業種により1級または2級)
  • 複数業種に係る実務経験を有する者

詳細は国土交通省の営業所専任技術者制度の関する資料で確認できます。

不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと

「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれがないこと」は誠実性の要件です。

契約の締結や履行に際して不正または不誠実な行為をすることが明らかである場合には建設業を営むことができないため、許可申請をすることができません。

財産的基礎又は金銭的信用を有している

「財産的基礎又は金銭的信用を有している」とは円滑な業務運営ができる状態にあるかを財産的な観点から審査をするための要件です。

建設工事を行うにあたっては、資材の購入や、労働者の確保、必要機材の購入などの一定の準備資金が必要です。建設業の許可が必要となる工事の受注ができる体制にあるのかを財産基盤をもとに審査するための許可要件です。

一般建設業許可の欠格要件

欠格要件は下記のとおりです。

  • 許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合。
  • 法人にあっては、当該法人、当該法人の役員等、法定代理人、支店又は営業所の代表者、個人にあってはその本人又は支配人等が、建設業法8条に掲げる要件に該当する場合。

建設業法8条に掲げる欠格要件の一例をご紹介します。

  • 破産者で復権を得ないもの
  • 一定の違反事項により建設業の許可を取り消され、取り消されてから5年を経過しない者
  • 建設業法に違反し、営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることができなくなった日から5年を経過しない者
  • 精神の障害により建設業を適正に営むための必要な認知、判断及び意思疎通ができない者
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者等

申請内容の正しさと申請者の適格性の両面において欠格事由が定められています。

特定建設業許可はさらに厳格な要件が求められる

一般建設業と特定建設業では許可要件に共通の部分もありますが、特定建設業では、より厳格な要件が求められます。

一般建設業よりも大きな規模の工事や関係業者も多数にわたることが想定されるため、必要な技術力、健全な経営、資金運営が必要となることから、下記の2点について、より厳格な要件が適用されます。

  • 専任技術者の資格要件
  • 財産的基礎等の要件

それぞれの要件について見ていきましょう。

専任技術者の要件を満たす国家資格の難易度が高い

建設業の許可で必要とされる専任技術者ですが、特定建設業では一般建設業よりも要件が厳しくなっています。例えば、一般建設業で認められていた専任技術者が一部認められなくなります。

具体的には、一般建設業で認められていた2級国家資格者が認められず1級のみ、実務経験者についても指定建設業以外の業種で、かつ、元請として4500万円以上の工事に関し2年以上の指揮監督的な実務経験を有する者とされています。

特定建設業の専任技術者として認められるための要件は下記のとおりです。

  • 国家資格者(1級施工管理士、1級建築士 等)
  • 一般建設業の専任技術者となり得る技術資格要 件を有し、かつ、許可を受けようとする建設業に 係る建設工事に関して、発注者から直接請け負 い、その請負代金の額が4500万円以上であるものについて2年以上の指導監督的な 実務の経験を有する者

資格要件に関しては、業種毎に専任技術者になるための資格が定められていますので、詳細に関しては国土交通省のホームページより確認ください。

財産的基盤は資本金2000万円以上必要

特定建設業の許可を受けようとする場合は、財産的基盤等の要件が一般建設業よりも厳しく設定されています。

一般建設業は3つの要件のいずれかに該当することが要件ですが、特定建設業は3つの要件すべてに該当することが必要となっています。いずれか一つではなくすべての要件を満たす必要がありますので注意が必要です。

一般建設業は下記のいずれかに該当することが求められます。

  • 自己資本が500万円以上であること
  • 500万円以上の資金調達能力を有すること
  • 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること

特定建設業は、下記のすべてに該当していなければなりません。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること

これは、特定建設業者は多くの下請負人を使用して工事を施工すること、健全な経営が要請されること、また、発注者から請負代金の支払いを受けていない場合であっても下請負人には工事の目的物の引渡しの申し出がなされてから50日以内に下請代金を支払う義務が課せられていること等の理由によるものです。

一般建設業と特定建設業の取得方法等における注意点

これまで一般建設業と特定建設業の許可の違いについて確認しましたが、その他の注意点についても触れておきます。許可取得時の取得方法と取得後の更新時の注意点について解説します。

財産的基盤の要件を更新時にも満たさなければならない

特定建設業の許可要件について、「技術力の要件」は常に満たす必要があり、「財産的基盤の要件」は新規申請時および5年ごとの更新時の直前の決算期に満たす必要があります。

たとえば、更新の直前期の決算で財政的基盤要件を満たせないときは、特定許可を継続することはできません。一般許可の要件を満たしていれば新規で一般許可の取得をし直す必要があります。

申請時点でのみ条件を満たしても、その後の決算期においても財産要件を満たさなければ、せっかく取得した許可が失効してしまう可能性もあるので注意しましょう。

同一業種で一般と特別の両方を取得できない

同一の建設業者が、ある業種については特定建設業の許可を、他の業種については一般建設業の許可 を受けることはできますが、同一業種について特定・一般の両方の許可を受けることはできません。

例えば、「塗装工事」は一般建設業許可で取得し、「鉄筋工事」は特定建設業許可と別々に取得することができます。

同一の建設業者がある種別の業種の許可を取得する場合には、許可要件に応じて一般か特定かを判断していずれかの資格で申請が必要ですので注意しましょう。

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