解体業許可の取り方とは?建設業許可・解体工事業登録との違いもわかりやすく解説

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解体業許可

「解体工事」は、老朽化した住宅の撤去や、再開発に伴うビルの解体など、さまざまな場面で必要とされる重要な工程です。

法律に基づいた届出や許可も必要であり、計画から実施までには多くの手続きが伴います。

今回は、解体工事の基本的な知識、建設業許可の関わりや登録解体工事との違いまでわかりやすく紹介します。

解体工事とは

「解体工事」とは、建築物や構造物を取り壊す工事全般を指します。

解体工事は廃材の分別・処分、近隣対応など、技術だけではなく配慮も求められる工種です。

また、アスベストなど有害物質の専門的な処理もしなくてはなりません。

具体的な例

解体工事の具体的な例を挙げてみましょう。

  1. 木造住宅の取り壊し
  2. 鉄骨造・RC造のビル解体
  3. 店舗の内装解体(スケルトン工事)
  4. 工場や倉庫の撤去
  5. 基礎部分の掘削・整地

木造住宅の解体では、重機を使って屋根や壁を順に取り壊し、手作業で細かい部分を処理することが一般的です。

一方、鉄骨造や鉄筋コンクリート造のビルでは大型の重機やクレーンを使い、上階から順に解体していく「階上解体」や「圧砕工法」が用いられます。

また、内装だけを撤去する「スケルトン解体」や、工場設備の撤去といった特殊なケースもあります。

工事の内容は、建物の用途や周辺環境によって大きく変わるのも特徴です。

解体の工事をするには「建設業許可」と「登録」が必要

解体工事を請け負うには、「建設業許可」と「解体工事の登録」どちらかが必要となります。

無許可・無登録で工事をすると、行政処分や罰則の対象となってしまいます。

工事を始める前に、必要な資格や手続きを確認しておくことが重要です。

かつて建設業許可において解体工事は「とび・土工工事」の一部として扱われていました。

しかし、近年では建物の構造が多様化し、解体作業に求められる技術や安全対策が高度化したことから、専門性の高い分野として注目されるようになりました。

こうした背景を受け、平成28年の建設業法改正により「解体工事業」が独立した業種として新設されました。

解体工事を請け負うには専用の登録や許可が必要であり、業者の技術力や法令遵守の体制がより厳しく問われるようになったのです。

 解体業の建設業許可とは

請負金額が500万円以上(税込)の工事をする場合、「建設業許可」を取得しなければなりません。

解体工事ができる業種は「土木工事業」「建築工事業」「解体工事業」のいずれかとなります。

また、建設業許可を受けるにはさまざまな要件をクリアしなくてはなりません。

許可が必要な場合は前もって要件を満たすように準備を進めておきましょう。

解体業の登録とは

請負金額が500万円未満(税込)の軽微な工事に該当する解体工事のみを請け負う場合は、「解体工事の登録」をします。

また、建築一式工事にあたっては、請負代金の額が1,500万円未満(税込)の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅を解体する場合となります。

ただし、個人で自宅の物置を自ら解体するような場合は、業としての工事に該当しないため登録は不要です。

登録が不要であっても、建設リサイクル法や廃棄物処理法は順守しなくてはなりません。

また、登録には、実務経験や技術的な資格を持つ責任者の配置も必要です。

解体業の「建設業許可」と「登録」の違い

登録解体工事業者とは、主に建設業許可を持たない業者が、申請して正式に解体工事業の登録を受けた事業者を指します。

一方、みなし登録業者とは、すでに建設業許可(解体工事業等)を取得している業者のことです。

みなしの場合、別途登録手続きをしなくても登録業者と同様に解体工事をすることが認められています。

ただし、建設業許可業者であって解体工事ができない業種で許可取得している場合は、みなし登録の対象にはなりません。

金額の大小にかかわらず解体工事を業として行うには、建設業許可の申請と解体工事業の登録のどちらかをしなければなりません。

どちらも法的な手続きですが、その目的や適用範囲には明確な違いがあるのです。

根拠となる法令

建設業許可建設業法
登録解体工事業建設リサイクル法

解体工事に関わる法令には、「建設業法」と「建設リサイクル法」があります。

建設業法は、工事の請負に関する制度を定めた法律であり、一定規模以上の工事をする業者に対して建設業許可を義務づけています。

一方、建設リサイクル法は、建設工事に伴って発生する廃棄物の再資源化と適正処理を目的とした法律です。

この法律では、延べ床面積80㎡以上の建物を解体する際に、事前の届出や分別解体、再資源化が義務づけられています。

また、解体工事業の登録制度もこの法律に基づいて設けられています。

つまり、建設業法は「業者の資格」を、建設リサイクル法は「工事の内容と環境配慮」を規定している点が大きな違いです。

対象となる工事金額

建設業許可500万円以上
登録解体工事業500万円未満

建設業許可と解体工事業の登録では、対象となる工事の範囲が異なります。

前述のとおり、建設業許可が必要となるのは1件あたり税込500万円以上の工事です。

建設業許可が必要な工事では、技術力や財務基盤など、一定の基準を満たした業者でなければ請け負うことができません。

一方、個人事業者が年に数件、500万円未満の小規模な解体工事をするようなケースであっても、登録が求められます。

営業エリア

建設業許可全国
登録解体工事業登録した都道府県内

建設業許可と解体工事業の登録では、営業できるエリアにも違いがあります。

建設業許可には「知事許可」と「国土交通大臣許可」がありますが、営業所の所在地による区別であり、許可を持っていれば全国どこでも工事することが可能です。

一方、解体工事業の登録は、基本的に登録をした都道府県内でのみ有効です。

解体業で建設業許可を取得するには

建設業許可を取得するには要件を満たす必要があります。

また、全ての請負工事に関して許可が必要なわけではありません。

初めての人にとっては要件の確認や申請は難しく感じるかもしれません。

前もって自治体や専門の行政書士に相談しておくのもよいでしょう。

許可が必要となる工事の条件

解体業で建設業許可が必要となるかどうかは、請け負う工事の金額によって判断されます。

繰り返しとなりますが、1件あたりの請負金額が税込500万円以上となる解体工事をする場合、建設業許可の取得が義務づけられています。

工事の内容にかかわらず、資材費や人件費、処分費などを含めた総額が500万円を超える場合は、許可がなければ請け負えません。

無許可で対象工事をした場合は、建設業法違反となり、罰則や行政処分の対象になってしまいます。

許可に必要な要件

解体工事業で建設業許可を取得するには、いくつかの要件を満たす必要があります。

  • 常勤役員等(経営業務管理責任者)の設置
  • 営業所等技術者(専任技術者)の配置
  • 財産的基礎
  • 欠格要件に該当しないこと
  • 社会保険の加入

まず重要なのが「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」の設置です。

これは、建設業に関する経営経験を一定期間有する人物でなければなりません。

次に、「営業所等技術者(専任技術者)」の配置が求められます。

1級または2級建築施工管理技士〈解体〉などの資格や、実務経験が必要です。

さらに、会社が請負契約を適正に履行できる「財産的基礎」も審査対象となります。

具体的には、自己資本が500万円以上あること、または直前5年間に許可を受けていた実績などが求められます。

加えて、過去に重大な法令違反がないなど「欠格要件に該当しないこと」も条件です。

さらに「社会保険の加入」も義務付けられています。

申請手続きと必要書類

上記の要件をすべて満たしている業者は、必要書類を整えて申請することで建設業許可の取得が可能となります。

その主な必要書類は次のようになります。

  • 許可申請書
  • 常勤役員等の証明書類
  • 技術者の資格証明書類
  • 財務諸表
  • 納税証明書
  • 住民票
  • 身分証明書
  • 営業所の証明書類

法人であればこのほかに定款、登記事項証明書なども必要です。

これらをそろえたうえで、営業所の所在地を管轄する都道府県の建設業担当窓口等に申請しましょう。

取得時の注意点

許可を申請する際に「とび土工工事業」などで申請をしてしまうと、許可が必要な金額の解体工事はできませんので申請時には注意しましょう。

申請後、内容審査が行われ問題がなければ通常1~2か月程度で許可が下ります。

許可が下りた後は、5年ごとの更新手続きや、毎年の事業報告書を提出しなくてはなりません。

申請は専門的な知識が求められるため、行政書士などの専門家に依頼するケースも多く見られます。

解体業で解体工事登録するには

解体工事業の登録が必要となるのは、建設業許可を持たない業者が反復継続して解体工事を請け負う場合です。

この登録制度を知らずに解体工事を請け負ってしまうと違反となってしまいます。

解体工事を請け負う可能性がある場合は、要件や申請方法を事前に確認しておくようにしましょう。

登録が必要となる工事の条件

請負金額が税込500万円未満の木造住宅や小規模な倉庫の解体などが、解体工事登録の条件に該当します。

金額が小さいからといって、登録が不要になるわけではありません。

たとえ請負金額が少額であっても、継続的に解体工事を請け負うのであれば、建設リサイクル法に基づき都道府県への登録が義務づけられています。

解体工事を継続して行う業者は、早いうちから登録を検討するようにしましょう。

登録に必要な要件

解体工事業の登録をするには、下記の要件を満たさなくてはなりません。

  • 資格等を有する技術管理者の設置
  • 欠格要件に該当しないこと

まず、解体工事に関する資格や実務経験を有する「技術管理者」の設置が求められます。

これは、一定年数以上の現場経験や、土木・建築施工管理技士などを持つ者が該当します。

次に、欠格要件に該当しないことも重要です。

たとえば、過去2年間で解体工事業の登録を取り消された業者、過去に建設リサイクル法に違反して処分を受け一定の期間が経過しない者などは登録が認められない場合があります。

申請手続きと必要書類

解体工事の登録の届出の際には主に次の書類が必要になります。

  • 解体工事業登録申請書
  • 誓約書
  • 登録申請者の調書
  • 実務経験証明書
  • 登記簿謄本
  • 住民票

まず基本となるのが「解体工事業登録申請書」です。

また、法人の場合は「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」が必要で、個人事業主であれば「住民票の写し」が求められます。

申請者が欠格要件に該当しないことを示す「誓約書」も提出します。

加えて、解体工事に従事する技術者が在籍していることを示す「資格証の写しや実務経験証明書、卒業証書など」を添付します。

これらの書類を整えたうえで、登録手数料を納付し届出します。

提出後、審査を経て問題がなければ登録通知書が交付され、正式に解体工事業者として活動できるようになるのです。

登録後の義務と注意点

工事現場には「標識」を掲示する義務があります。

標識には登録番号や商号、登録年月日や技術管理者の氏名などを明記し、見やすい場所に設置することが求められます。

そのほかに、帳簿の備え付け義務、分別解体等実施義務や再資源化実施義務などが課せられています。

登録解体業者は、これらの法的な義務を社内で周知しておかなくてはなりません。

建設業許可と解体工事登録、どちらを選ぶべきか

要件や制度の趣旨はわかったけど、実際どちらを申請するのかよいのか判断するのは難しいかもしれません。

次にその判断の基準となる項目について解説していきます。

事業の規模で選ぶ

許可と登録のどちらを選ぶべきかは、請け負う工事の金額によって異なります。

比較的小規模な工事を中心に行う場合は、登録のみで問題ありません。

一方、許可を取得すれば金額にかかわらず解体工事を請け負えるようになります。

将来的に大規模な案件を扱う予定がある場合や、元請としての信頼性を高めたい場合は、初めから建設業許可を取得しておくのも有効です。

事業の方向性に応じて、適切な制度を選びましょう。

両方の取得が必要なケースとは

解体工事業を営むにあたり、「登録解体工事業」と「建設業許可」のどちらか一方を取得すればよいと考えがちですが、実は両方の取得が必要となるケースも存在します。

建設業許可を持っていても、「土木工事業」「建築工事業」「解体工事業」以外の許可業種であれば、解体工事業登録をしましょう。

工事の規模や許可業種によって、両制度の併用が必要になる点には注意が必要です。

許可取得後に登録はどうなる

解体工事業等の建設業許可を取得すれば、登録は不要になります。

これは、建設業許可を持つことですべての解体工事に対応できるためです。

ただし、すでに解体工事登録していた場合は建設業許可を取得した旨を都道府県に届け出なければなりません。

「解体工事業廃業等届出書」を作成し、建設業許可通知書を添付します。

これにより登録の効力は失われ、以後は建設業許可業者としての手続きや義務に一本化されます。

なお、標識の表示内容も「登録業者」から「建設業許可業者」に変更しましょう。

解体業によくある質問

解体工事にかかわる制度は複雑ですので、わからない点は事前に確認しておくのが安心です。

ここでは解体業に関するよくある質問をまとめてみました。

登録だけで500万円以上の工事はできる?

登録解体工事業者のままでは、税込500万円以上の解体工事を請け負うことはできません。

たとえ技術力や実績があっても、法的には「無許可営業」とみなされます。

但し、自社所有のビルを解体するなど請負工事でない場合は、基本的には許可も登録も必要ありません。

複数都道府県で工事する場合の手続きは?

解体工事業を複数の都道府県で行う場合、営業所の所在にかかわらず工事をするすべての都道府県で個別に登録が必要です。

登録の際には、都道府県ごとに申請書類を用意し登録手数料を納付します。

また、5年ごとに更新を都道府県ごとに行わなければなりません。

一方、解体工事等の建設業許可を取得すれば、全国での工事が可能となります。

事業の展開エリアや規模に応じて、登録と許可の使い分けを検討しましょう。

許可と登録の更新手続きの違いは?

建設業許可の更新は5年ごとに行い、更新申請書に加えて、直近の決算報告書、納税証明書、経営業務管理責任者や専任技術者の在籍証明など、多くの書類が必要です。

また、更新には5万円程度の手数料がかかり、審査も厳格です。

更新を怠ると許可が失効し、許可が必要な工事を請け負えなくなります。

一方、登録解体工事業の更新も5年ごとですが、提出書類は比較的シンプルで主に登録申請書、誓約書、技術管理者の資格証明、住民票などが中心です。

手数料も自治体によりますがおおよそ30,000円前後であり、審査も許可に比べて簡素です。

ただし、更新期限を過ぎると再登録が必要となり、その間に工事をすると無登録営業とみなされるため注意しましょう。

 

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