建設業法の第3条第1項において、建設業を営もうとする者はその営業所の設置形態に応じて国土交通大臣または都道府県知事の許可を受ける必要があることが定められています。
また同条第1項但書により、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者はこの限りではないと除外されており、許可が必要ない旨が規定されています。
政令で定められている「軽微な建設工事」とは、どのような工事を指すのかを見ていきます。
また、建設業の許可が必要な工事を無許可で請け負った場合の罰則についても解説します。これらのポイントを順に確認していきましょう。

- 上場企業や大手グループへのサポート実績多数!複雑な状況もお任せください
- 簡単なヒアリングで建設業許可の取得可能性の判断をお伝えします
- 許可要件を満たさない場合は、最短取得までの準備方法をご案内いたします
建設業許可は請負金額500万円以上の工事に必須
建設工事の請負金額が税込500万円以上となる場合、建設業許可が必要になります。ただし、税込500万円未満の軽微な工事に該当する場合は、許可の所有は問われません。
建築一式工事に該当せず、請負金額500万円未満の工事であれば建設業の許可を取得することなく工事を請け負うことができます。
また、法人、個人を問わず、どのような規模の事業者であっても同様となります。
規模の小さい事業者にとっては、税込500万円以上の工事となるとかなり大規模な案件となることでしょう。契約が決まってから建設業許可申請をすることは、時間を要するためおすすめできません。
いつでもこのような案件を請けることができるように、建設業許可を前もって取得しておくと安心です
請負金額の計算における注意点!抜け道はなし
建設業の許可が必要か否かの判断をするために、受注しようとする請負金額が一体いくらになるのかはとても重要です。
この請負代金については、同じく政令で定められています。(建設業法施行令第1条の2第1項)
金額の算出のための計算については次の3つの注意点がありますが、何か特別な方法での抜け道などはありませんので一つずつ丁寧に確認していく必要があります。
工事金額の算出を誤り、実際には500万円以上の請負工事だったにもかかわらず、無許可で受注した場合は建設業法違反となります。
違反があった場合には、重い罰則が科されるため、十分に注意が必要です。
請負金額は全ての工事の合算
同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とします。(建設業法施行令第1条の2第2項)
なお、契約の分割については同項但書により、正当な理由に基づいて契約を分割をしたときは、この限りではない旨の規定があります。
理由があれば合算しなくてもいいこととされていますが、建設業法の適用逃れではないことを証明できなければなりません。
例えば、次のような場合にはそれぞれの工事額が500万円未満であっても軽微な工事とはみなされませんので合算して計算します。
- 受注した工事の中で、それぞれの工種ごとの契約を締結し500万円未満の場合、それらは合算した額で500万円以上か確認します。
- 工期が長期間にわたる場合に、間を空けて複数回の工事を受注し各契約が500万円未満の場合にも合算して計算する必要があります。
工事の実態で判断!請求書の分割はできない
建設業許可を持っていない業者のために、「意図的に」一つの建設工事を複数に分割し税込500万円未満の請負契約とすることは、建設業法違反に該当します。
「同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする」と建設業法に定められています。
契約書や請求書が分割されていたとしても、実際の工事の状態にて判断されてしまうのです。
この判断基準は、分割された工事がそれぞれ「別の工事として認められるか否か」というところになります。判断をするのは各許可行政庁です。合理的かつ正当な理由がある場合は、別工事として認められます。
分割できない例は、付帯工事である場合です。付帯工事は、まとめて一つの関連した工事と判断されます。
中には、長い工期の工事を月別に分けて1月期工事、2月期工事とした場合にこれらは別工事と判断されたケースもあります。
よって、自己判断はとても難しいです。
工事の分割は昔からよく行われてきた「建設業許可のない業者がいかにして500万円以上の工事を行うか」の常套手段です。
それを行政庁も十分承知していますので、工事を安易に分割しないようにしましょう
材料費は無償提供であっても請負金額に含まれる
注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送費を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを請負代金の額とします。(建設業法施行令第1条の2第3項)
注文者が材料を提供する場合は、たとえ無償提供であっても実際の市場価格、現場までの運送費を請負代金に加えて計算する必要があります。
消費税を含めた金額で判断される
請負代金や支給材料に係る消費税、地方消費税についてはすべて請負代金に含めて判断します。
建設業許可事務ガイドラインによると消費税や地方消費税は消費一般に負担を求める間接税であることから、取引の各段階において適正に転嫁される必要から請負額の金額に含めることとされています。
税制改正により消費税が変更され増額すると、これまでより少ない工事の受注額でも500万円以上に該当しやすくなります。
消費税率などが改正された場合はこれまで以上に注意して金額の算出が必要となります。
500万円未満でも建設業許可が必要なケース
これまで確認してきたように、請負金額500万円未満の軽微な建設工事については基本的に建設業の許可は不要ですが、いつでも必ず許可不要というわけではありません。
場合によっては請負金額が500万円未満でも、建設業の許可が必要となるケースもあります。
このケースに該当する場合は複数の営業所があり、営業所毎に建設業の許可の取得状況が異なる場合です。
例えば、本社では鉄筋工事と電気工事の許可を取得し、A営業所では電気工事のみ、B営業所では許可の取得なしだとします。
本社では鉄筋工事も電気工事も500万円以上の工事が受注でき、それ以外の工種については軽微な工事に該当すれば500万円未満で受注できます。
A事業所では、電気工事は500万円以上の工事の受注が可能ですが、鉄筋工事についてはたとえ500万円未満の軽微な工事だとしても許可がなければ工事の受注ができません。それ以外の工種については本社と同様です。
B事業所については、鉄筋工事と電気工事についてはたとえ500万円未満の軽微な工事に該当したとしても許可なく工事の受注ができません。それ以外の工種については本社と同様です。
営業所が複数ある事業者が建設業の許可を取得すると、許可を受けた業種については軽微な工事のみ行う営業所についても許可を受けた営業所と同様に扱うこととされているためです。
追加工事で500万円を超える場合も許可が必要
追加工事が発生し、請負金額の合計が税込500万円以上となってしまったら、この工事は建設業の許可が必要となります。
未許可業者であれば、この追加工事を行うことはできません。
他の業者に追加工事をしてもらうか、別の工事として新たに契約を結ぶ必要が出てきます。しかし、別の工事となるかどうかの判断は、発注者や工事業者ではなく行政庁となります。
建設業法違反とならないように、適切に対処しましょう。
建設業許可なしに500万円以上の工事を請け負うと罰則がある
許可の必要な工事を無許可業者が請け負ってしまったらどうなるのでしょうか。この時は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」となることがあります。
また、この後建設業の許可を取得しようとしても欠格要件に該当し、一定期間許可を取ることができません。
許可業者であったとしても、虚偽申請であったり許可業者としての義務を果たさない場合は「6か月以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。
これらは更新や変更届の提出時に判明することが多く、時に立ち入り調査の対象となり行政庁が訪問し判明することもあります。
個人が違反をした場合でも、その個人が属する法人も罰則の対象となります。
法律上このような罰則があるということを常に意識して下さい。
下請けが許可を取得していないと元請として罰則の対象となる
500万円以上の工事を無許可の下請業者に出し工事が行われた場合、その罰則は下請業者だけではなく元請も受けることとなります。
また、下請業者が何か建設業法違反を起こした際、元請業者にも立ち入り調査が入ることがあります。
建設業を営むということは、全ての業者は法にのっとり適正に工事を行う認識を強く持たなくてはなりません。
そして許可を取得することは、様々な要件をクリアし適正に業務を行うことができる業者であるという行政庁からのお墨付きをもらったということです。
下請業者が元請から許可の取得を求められる事が多いのも、こういった背景があるからなのです。
同業者からの通報でバレることがある
建設業者同士で色々探り合うケースもよくみられます。匿名で行政庁に通報される業者もいます。
許可を持っている業者であるかどうかは、誰でも簡単に調べることができます。
無許可業者が大体的に大きな工事を行ってしまうと、役所に通報されることもあります。特に近隣の同業者同士であると、仕事の奪い合いのような状態となりいざこざが起きやすくなるのも事実です。
その他にも労基署の調査で疑義をもたれ、無許可営業がばれてしまったという業者もいます。
逮捕されたケース
許可業者であってもなくても、建設工事を営む業者は建設業法にのっとり適正に業務を行わなくてはなりません。これに違反した場合は、罰則が科せられます。
会社ぐるみで行われていた場合、法人代表者が逮捕される事態となることもあります。建設業界に限りませんが、実際には水面下では色々なことが行われています。
これは現代の建設業界の担い手不足など、様々な要因故のものであると言えます。逮捕されるケースは稀ですが、建設業者として法に従い安全かつ公正な業務を行うことは義務であります。
また、「見せしめ」として逮捕されるパターンがあるのも事実です。
請負金額は自己判断が難しいこともある
発注者から契約内容を提示されたとき、たとえ故意ではなくても法に抵触する事が考えられます。
許可を必要とする業種が違うかもしれません。請負金額が適正ではないかもしれません。
特に経験の浅い業者であれば、判断は難しいものとなります。
疑義がある場合は、事前に行政庁や専門の行政書士に確認をするようにしてください。
建設業許可と500万円に関するよくある質問
建設業許可と500万円に関するよくある質問をご紹介します。
無許可で請け負ってしまった後に許可を取得できる?
しかし、許可行政庁にマークされてしまうことは避けられず、指導を受けることとなります。
無許可営業を繰り返し行っているなど悪意のある場合は、この限りではありません。
無許可営業には法で決められている罰則がありますが、実際のところは建設業の必要性などの観点より見逃されているのも事実です。
また無許可で行った工事について、許可申請時の工事実績として認められるか否かは各許可行政庁の判断となります。
公共工事の場合、500万円未満でも許可が必要ですか?
公共工事を行う場合は、その団体の入札参加資格をもっていなければなりません。
入札参加資格を得るためには、建設業許可は必須です。
ただし、建設工事ではなく委託や物品などであれば、建設業許可は不要です。
常用工事で500万円を超える場合建設業許可は必要ですか?
常用工事とは、「現場に人工出しをする契約」です。
工事の完成を約束する「請負契約」ではありません。
常用工事は建設業法における建設業に該当しませんので、建設業許可は不要となります。
500万円以下でも施工体制台帳は必要?
施工体制台帳の作成義務があるのは元請業者のみです。
そして、建設業者の状況や工事の種類により異なります。
民間工事の場合、特定建設業である元請業者はその工事を下請に出す際にその金額の総額が4,500万円以上(建築一式の場合は7,000万円)となるときに施工体制台帳の作成が必要です。
公共工事の場合は、元請業者がその工事を下請に出す際金額にかかわらずに施工体制台帳を作成しなければなりません。
また、施工体制台帳が必要な工事の下請業者においては、「再下請負通知書」を作成する必要があります。