個人事業主が建設業許可を取得する方法!費用や必要書類は?

個人事業主に該当し、これまで従業員なども雇わずに家族経営で仕事を進めてきた方が建設業許可を取得する必要が生じた場合、どのような方法で取得すればよいのでしょうか?

例えば、次のような場合において個人事業主であっても建設業許可の取得を考えることでしょう。

  • 工事を受注する際に元請け業者から取得を求められた
  • 許可がないために受注ができなかった
  • 受注案件が500万円以上となった
  • 公共工事を受注したい

建設業許可の取得は難しいものです。いざ取得するとなった時に必要となる費用や方法、メリットやデメリットなどについて確認していきましょう。

建設業許可は個人事業主でも取得できる

法人化していない個人事業主であっても建設業許可を取得することは可能です。

従業員を一人も雇わない、いわゆる一人親方でも取得ができます。

建設業の許可は「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する者以外は、建設業の許可を受けなければなりません。

「軽微な建設工事」にあたらない受注範囲内であれば許可は必要ありませんが、様々な事情で許可が必要となる場面が出てくると思います。

例えば、元請業者から許可の取得を求められたり「500万円以上の工事を受注することになった」「今後の事業規模を拡大したい」と考えて取得するケースが考えられます。

許可取得の要件は法人と同じ

個人事業主の建設業許可の取得要件は大枠としては法人と同じです。共通部分は、4つの許可要件と欠格要件に該当しないことです。

  • 経営業務の管理責任者の設置が必要
  • 営業所に常勤する専任技術者の設置
  • 不正、不誠実な行為をしない誠実性が求められる
  • 一定の自己資本や資金調達能力を証明する
  • 欠格要件に該当しないこと

共通する要件をみていきましょう。

経営業務の管理責任者の設置が必要

個人事業主においては、経営の管理・執行経験がある本人が管理責任者となります。要件として許可を受けたい業種で5年以上(他業種であれば6年以上)の経営経験が必要です。

営業所に常勤する専任技術者の設置

許可を受ける営業所ごとに専任技術者の設置が義務付けられます。従業員を雇わずに一人で業務を行う場合、個人事業主本人が専任技術者に該当する必要があります。

  • 業種毎に必要とされる国家資格
  • 10年以上の実務経験
  • 指定学科の卒業+3年~5年の実務経験

上記いずれかに該当する必要があります。

不正、不誠実な行為をしない誠実性が求められる

不正な行為、不誠実な行為とは契約締結において詐欺や脅迫、横領などをしないことを指します。信用が重要な建設業においては、誠実性が求められています。

一定の自己資本や資金調達能力を証明する

一定の自己資本とは自己資本が500万円以上あること、又は500万円以上の資金調達能力を有することのいずれかに該当することが求められる要件です。

  • 500万円以上の預金の残高証明書
  • 直近の決算における貸借対照表上の純資産額が500万円以上

上記の証明が必要となります。

欠格要件に該当しないこと

建設業法で定める欠格要件に該当しないことが必要です。具体的には許可に相応しくない行為、財産管理能力や意思能力に問題がある場合などが該当します。

  • 建設業法違反により営業停止などの処分を受けていて、処分期間を経過しない者
  • 破産者で復権を得ない者
  • 精神の障害により建設業を営むために必要な判断、意思疎通ができない者

などが1例として挙げられます。

個人事業主が建設業許可を新規で取得する際の費用は9~15万円

個人事業主が建設業の許可を取得する場合に掛かる費用は、大きく分けて3つにわかれます。

  • 申請手数料
  • 添付書類取得費用
  • 行政書士報酬

最低限必要となる費用は、登録に必要な申請手数料と申請に必要な添付書類を取得するための費用です。別途行政書士に依頼したときには、報酬として10万円~20万円程度掛かります。

許可の種類新規申請の手数料
大臣許可150,000円
知事許可90,000円

申請に必要な書類の発行先が様々ですので費用以外にも取得に要する時間が掛かります。

例えば、必要書類のなかに「身分証明書」がありますが、こちらは本籍地でのみ取得が可能です。本籍地が遠方にあり郵送でしか申請できない場合があります。

「登記されていないことの証明書」は取得先が法務局になりますが、東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課と限定されています。

法人に比べて必要書類が少ない

法人である場合には、履歴事項全部証明書(会社の登記簿謄本)や定款といった法人特有の書類が必要となります。

会社である以上、会社の事業目的などが取得しようとする建設業の許可と齟齬が生じないように確認する必要があります。登記事項がきちんと登記されているかも確認されます。

また令和2年10月1日施行の建設業法の改正により「適切な社会保険に加入していること」が許可要件となっています。

法人ですと社会保険の適用事業所として健康保険・厚生年金保険の加入が必須ですのでこれらの加入を済ませた上で、それらの保険料をきちんと納めた領収書の写しを添付する必要があります。雇用保険の対象労働者がいれば、雇用保険に関する確認書類も必要となります。

個人事業主である場合は法人ならではのこれらの書類が必要ありません。一方で「適切な社会保険に加入していること」は個人事業主にも該当しますので、国民健康保険・国民年金の保険料領収書の写しが必要となります。

個人事業主が建設業許可を取得するメリット

個人事業主が建設業の許可を取得するメリットは受注金額の拡大、公共事業の受注が可能になる、元請業者などからの信用力の高まりなどにより受注を受けやすくなることなどが挙げられます。

  • 請負金額500万円以上の建設工事を受注できる
  • 信用力が高まり発注を受けやすくなる
  • 法人設立費用が抑えられる

建設業許可を取得するメリットについてみていきましょう。

請負金額500万円以上の建設工事を受注できる

建設業の許可を取得することで、受注金額の制限がなくなり、より大きな規模の工事を請け負うことが可能となります。受注実績が積み上がれば、更なる受注も受けやすくなります。

工事自体が500万円を超えなくとも、材料費を合わせると500万円を超えたり、工種の異なる複数の契約を合算した場合に超えてしまうなど予期せぬ事態に備えることもできます。

信用力が高まり発注を受けやすくなる

コンプライアンス遵守の風潮の高まりから、元請業者から下請業者に対して建設業の許可取得を求めることがあります。

これまでの受注実績から信頼を得ることもありますが、行政からの審査を通った証明でもありますのでよりわかりやすく信用力を高めることにつながります。

同じ規模、同じ経験の業者において、許可がある業者とない業者であればもちろん許可取得済みの方が受注する際に有利に働くでしょう。

法人設立費用が抑えられる

個人事業主として法人成りの予定がないのであれば、個人事業主として建設業の許可を受けることで法人ならではの費用を抑えることができます。

法人として設立する場合には、設立登記に必要な登記費用、税務署への届出、社会保険の適用事業所該当届や司法書士や税理士、社会保険労務士といった各士業に依頼した場合の報酬が必要となりますが、これらの費用が不要となります。

個人事業主が建設業許可を取得するデメリット

次に、法人化せずに個人事業主として建設業の許可を取得した場合のデメリットや、建設業の許可を取得した場合における許可前では必要のなかった届出に関するデメリットを確認します。

  • 経営管理者は事業主しかなれず事業の拡大が難しい
  • 法人と比べて金融機関の融資を受けにくい
  • 事業年度終了時に決算報告書を提出しなければならない

場合によっては法人化してから建設業許可を取得する方がいいケースもあります。

経営管理者は事業主しかなれず事業の拡大が難しい

個人事業主が建設業の許可を取得する場合における経営管理者は事業主本人しかなれません。

法人であれば経営経験豊かな許可要件を充たす人材を取得する方法も取れます。個人事業主の場合、経営管理者と事業主本人が同一人物となるため経営業務に集中するための時間を捻出できなかったり、経営の幅に制約が掛かり事業の拡大が難しくなります。

法人と比べて金融機関の融資を受けにくい

金融機関で融資を受ける際には、法人と個人事業主とで明確な差があるわけではありませんが、法人ですと設立登記をして定款を作り、会社として求めれる管理体制が敷かれるため個人事業主よりも融資のハードルは下がると考えられます。

個人事業主の方が、融資判断のための拠り所となる情報が少ないと見られ融資を受けにくい可能性があります。

事業年度終了時に決算報告書を提出しなければならない

建設業の許可取得後、決算日から4ヶ月以内に毎年決算報告をする義務があります。

仮に決算報告を怠った場合に、直ちに許可の取消にはなりませんが、業種追加など申請が必要となる場合には申請を受け付けてもらえません。

また建設業の許可には5年間の有効期間があり、更新前に1期でも決算報告書の届出もれがあると更新申請を受け付けてもらえません。更新申請が通らないと最悪の場合許可が失効してしまうので注意が必要です。

個人事業主の建設業許可に関するよくある質問

これまで個人事業主の建設業許可の取得方法等確認しましたが、よくある質問について以下にまとめたので参考にしてください。

社会保険の加入は任意ですか?

法人であれば、健康保険・厚生年金保険の加入が必須であり、雇用保険対象労働者を従業員として雇いれた場合には雇用保険の加入も必要となります。

個人事業主で従業員が一人もいなければ、個人事業主本人の国民健康保険・国民年金の加入が義務となります。

法人成りの際は新たに許可を取る必要がありますか?

令和2年10月1日施行の建設業法改正により建設業者の地位の承継が可能となりましたので、要件に該当すれば新たな許可は必要ありません。

改正前は法人成りの際の許可については、個人で取得した建設業許可を廃業申請し、新たに設立した法人として許可の新規取得をする必要がありました。

この方法ですと新しい許可が下りるまでに無許可期間が生じてしまい不利益となっていました。

改正によりこの無許可期間をなくし、個人で取得した建設業の許可を新しく設立した法人へ承継することが可能となりました。

個人事業主の建設業許可申請は自分でできますか?

個人事業主の建設業許可申請はもちろんご自身で行うことも可能です。

申請方法の手引きは各申請窓口となる都道府県等でHP上に公開もされていますし、申請窓口に相談に行けば対応もしてくれます。

懸念としては、通常業務の忙しい合間を縫って申請のための時間を捻出したり、申請書を作成する時間や万が一申請に不備があった場合の対応などがあげられます。

費用は掛かりますが、その分の時間を本業に専念できる、申請したものの許可が下りずに申請費用が無駄になったということがないように専門家である行政書士に依頼することも検討されてはいかがでしょうか。

一般建設業と特定建設業の違いとは?

建設業とは、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。建設業を営もうとする者は、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する者以外は、建設業の許可を受けなければなりません。

建設業の許可とは下請契約の規模により「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分された許可のことです。

「特定建設業」の許可は、元請業者として工事を完成させるための高度な技術と経験を必要とし、下請業者を指揮監督する立場にあるためその要件が厳しく定められています。

また、令和5年1月1日建設業法施行令の一部改正により特定建設業許可や技術者の専任配置要件の見直しが行われました。

今後も許可基準等については社会経済情勢に応じた見直しが行われますので法改正情報には注意が必要です。

それでは、一般建設業と特定建設業の違いについて詳しく見ていきましょう。

一般建設業と特定建設業の違いは許可要件の難易度

一般建設業と特定建設業の区分は下請契約の金額により異なります。元請・下請共に必ず必要となる許可は一般建設業の許可です。

下請契約の金額により元請業者のみ必要となる許可が特定建設業の許可です。一般的に、個人事業主や小規模企業は一般建設業許可の取得することになるでしょう。

  • 一般建設業とは下請け業者も必要
  • 特定建設業とは元請業者のみ必要

一般建設業と特定建設業のどちらも発注者から請け負うことができる金額に制限はありません。

一般建設業とは下請け業者も必要な営業許可

「軽微な建設工事」のみ請け負って営業する場合を除き、建設業を営もうとする者は、元請・下請を問わず一般建設業の許可の取得が必要となります。

軽微な建設工事とは下記の工事を指します。

  • 建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
  • 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

下請け業者だから許可が要らないわけではありません。軽微な工事にあたらなければ、すべての業者に取得が必要とされる許可が一般建設業の許可になります。

500万円以上の工事が請け負える

一般建設業の許可を受ければ、より大きな工事を受注することが可能になります。

例えば、建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円以上、建築一式工事については1500万円以上の工事を受注することも可能となります。

また、建設業の許可を取得することにより、公共工事の受注も可能になりますので、受注案件の幅が広がります。

特定建設業とは元請業者のみ必要な営業許可

特定建設業の許可は、元請業者にのみ取得が必要とされる許可です。元請業者として下請業者へ一定額以上の下請契約をする際に許可が必要となります。

具体的には、元請業者が発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額 が4500万円以上(建築一式は7000万円以上、いずれも消費税及び地方消費税を含む)となる下請契約を締結して施工する場合です。必要となるのはあくまでも元請業者のみです。

また、下請代金の額については複数の下請け契約がある場合は合算された金額となります。

下請業者に4500万円未満(建築一式は7000万円未満、いずれも消費税及び地方消費税を含む)の金額で契約する場合や、自社で施工を完結させる場合には許可は必要となりません。

令和5年1月1日の改正によりこれまでの基準が変更されています。

改正前改正後
4000万円以上4500万円以上
建築一式工事の場合は7000万円以上建築一式工事の場合は7500万円以上

今後も、基準が変更される可能性があるため最新情報をチェックしておきましょう。

社会的信用度が上がり融資も受けやすくなる

建設業の許可は、営業所の設置形態により、国土交通大臣の許可や都道府県知事の許可が必要となります。いずれも許可要件に沿った厳格な審査がなされます。

許可を取得することは審査に通った証明になりますし、許可要件の一つ「請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること」を満たした証明にもなります。

特に特定建設業の許可においてはより厳しい審査基準が適用されます。下請業者への支払いの遅延などがないように財政基盤が厳しく審査されますので、融資においてもプラスに働く要素になりえます。

また日本政策金融公庫での「新創業融資制度」に必要とされる書類には「許可・届出等が必要な事業を営んでいる方」の書類として「許認可証のコピー」が求められています。

許可取得の難易度が高く時間がかかる

許可申請に必要な手引きなど情報の入手や申請内容の理解、多岐にわたる必要書類を取得する手順、申請書への記入など膨大な時間と労力が必要となります。

また必要書類の中には提出時点での発行期限を求める書類も多数ありますし、法改正などにより要件の変更などにも注意が必要です。

通常申請前の準備時間と審査機関による審査完了までの時間を許可取得までの時間として見積りますが、審査主体により1.5ヶ月~4ヶ月程度かかります。

書類を揃えていくだけでも労力がかかりますので、その後の申請書作成・申請までの段取りについては申請のプロに依頼することをお勧めします。

一般建設業と特定建設業は取得要件が異なる

一般建設業と特定建設業は取得要件が一部異なりますが、特定建設業については下請業者保護や受注案件の規模が大きくなるため要件が厳しく設定されています。

一般建設業に必要な4つの要件と欠格要件

一般建設業に関連する要件は下記のとおりです。

  • 適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること。(建設業法施行規則第7条第1号、第2号)
  • 営業所ごとに「専任技術者」を配置していること。
  • 暴力団関係企業等、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
  • 請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること。
  • 欠格要件に該当しないこと

それぞれ詳しく見ていきましょう。

適正な経営体制を有する

「適正な経営体制を有する」とは、経営業務の管理責任者を設置していることを指します。

これは建設業の経営が他の産業の経営とは著しく異なる特徴を有するため、適正な業務運営のため必要とされる要件です。

取締役や事業主など、一定の立場で建設業の経営を5年以上(一部補助業務について6年以上)の実務経験を有する者等がこれに該当します。

適切な社会保険に加入している」とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険等の各種社会保険に関して適用事業の事業所に該当するすべての事業所について加入することが要件となっています。健康保険・厚生年金保険について、株式会社は基本的に加入が必須です。

専任技術者の配置

「営業所ごとに専任技術者を設置する」とは、一定の資格または経験を有した者を営業所ごとに設置する要件です。

建設工事に関する請負契約の適正な締結をするためには専門の知識が必要とされます。見積、入札、請負契約等の建設業の業務は各営業所で行われることから、各営業所での設置が義務付けられています。

一般建設業の許可取得の場合の専任技術者の概要は下記のとおりです。

  • 指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務経験を有する者
  • 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
  • 許可を受けようとする建設業に関する建設工事に関して、10年以上実務経験を有する者
  • 国家資格者(業種により1級または2級)
  • 複数業種に係る実務経験を有する者

詳細は国土交通省のホームページで確認できます。

不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと

「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれがないこと」は誠実性の要件です。契約の締結や履行に際して不正または不誠実な行為をすることが明らかである場合には建設業を営むことができないため、許可申請をすることができません。

財産的基礎又は金銭的信用を有している

「財産的基礎又は金銭的信用を有している」とは円滑な業務運営ができる状態にあるかを財産的な観点から審査をするための要件です。

建設工事を行うにあたっては、資材の購入や、労働者の確保、必要機材の購入などの一定の準備資金が必要です。建設業の許可が必要となる工事の受注ができる体制にあるのかを財産基盤をもとに審査するための許可要件です。

一般建設業許可の欠格要件

欠格要件は下記のとおりです。

  • 許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合。
  • 法人にあっては、当該法人、当該法人の役員等、法定代理人、支店又は営業所の代表者、個人にあってはその本人又は支配人等が、建設業法8条に掲げる要件に該当する場合。

建設業法8条に掲げる欠格要件の一例をご紹介します。

  • 破産者で復権を得ないもの
  • 一定の違反事項により建設業の許可を取り消され、取り消されてから5年を経過しない者
  • 建設業法に違反し、営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることができなくなった日から5年を経過しない者
  • 精神の障害により建設業を適正に営むための必要な認知、判断及び意思疎通ができない者
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者等

申請内容の正しさと申請者の適格性の両面において欠格事由が定められています。

特定建設業許可はさらに厳格な要件が求められる

一般建設業と特定建設業では許可要件に共通の部分もありますが、特定建設業では、より厳格な要件が求められます。

一般建設業よりも大きな規模の工事や関係業者も多数にわたることが想定されるため、必要な技術力、健全な経営、資金運営が必要となることから、下記の2点について、より厳格な要件が適用されます。

  • 専任技術者の資格要件
  • 財産的基礎等の要件

それぞれの要件について見ていきましょう。

専任技術者の要件を満たす国家資格の難易度が高い

建設業の許可で必要とされる専任技術者ですが、特定建設業では一般建設業よりも要件が厳しくなっています。例えば、一般建設業で認められていた専任技術者が一部認められなくなります。

具体的には、一般建設業で認められていた2級国家資格者が認められず1級のみ、実務経験者についても指定建設業以外の業種で、かつ、元請として4500万円以上の工事に関し2年以上の指揮監督的な実務経験を有する者とされています。

特定建設業の専任技術者として認められるための要件は下記のとおりです。

  • 国家資格者(1級施工管理士、1級建築士 等)
  • 一般建設業の専任技術者となり得る技術資格要 件を有し、かつ、許可を受けようとする建設業に 係る建設工事に関して、発注者から直接請け負 い、その請負代金の額が4500万円以上であるものについて2年以上の指導監督的な 実務の経験を有する者

資格要件に関しては、業種毎に専任技術者になるための資格が定められていますので、詳細に関しては国土交通省のホームページより確認ください。

財産的基盤は資本金2000万円以上必要

特定建設業の許可を受けようとする場合は、財産的基盤等の要件が一般建設業よりも厳しく設定されています。

一般建設業は3つの要件のいずれかに該当することが要件ですが、特定建設業は3つの要件すべてに該当することが必要となっています。いずれか一つではなくすべての要件を満たす必要がありますので注意が必要です。

一般建設業は下記のいずれかに該当することが求められます。

  • 自己資本が500万円以上であること
  • 500万円以上の資金調達能力を有すること
  • 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること

特定建設業は、下記のすべてに該当していなければなりません。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること

これは、特定建設業者は多くの下請負人を使用して工事を施工すること、健全な経営が要請されること、また、発注者から請負代金の支払いを受けていない場合であっても下請負人には工事の目的物の引渡しの申し出がなされてから50日以内に下請代金を支払う義務が課せられていること等の理由によるものです。

一般建設業と特定建設業の取得方法等における注意点

これまで一般建設業と特定建設業の許可の違いについて確認しましたが、その他の注意点についても触れておきます。許可取得時の取得方法と取得後の更新時の注意点について解説します。

財産的基盤の要件を更新時にも満たさなければならない

特定建設業の許可要件について、「技術力の要件」は常に満たす必要があり、「財産的基盤の要件」は新規申請時および5年ごとの更新時の直前の決算期に満たす必要があります。

たとえば、更新の直前期の決算で財政的基盤要件を満たせないときは、特定許可を継続することはできません。一般許可の要件を満たしていれば新規で一般許可の取得をし直す必要があります。

申請時点でのみ条件を満たしても、その後の決算期においても財産要件を満たさなければ、せっかく取得した許可が失効してしまう可能性もあるので注意しましょう。

同一業種で一般と特別の両方を取得できない

同一の建設業者が、ある業種については特定建設業の許可を、他の業種については一般建設業の許可 を受けることはできますが、同一業種について特定・一般の両方の許可を受けることはできません。

例えば、「塗装工事」は一般建設業許可で取得し、「鉄筋工事」は特定建設業許可と別々に取得することができます。

同一の建設業者がある種別の業種の許可を取得する場合には、許可要件に応じて一般か特定かを判断していずれかの資格で申請が必要ですので注意しましょう。

建設業許可とは?種類別の取得要件と申請方法

建設業許可は、建設工事を請け負う際に必要な許可です。厳格な要件を満たすことで、建設業を営むことができます。

一方で、建設業許可を要することなく、営業ができる場合もあります。今回は、建設業許可の種類や複雑な申請の流れについて解説します。

建設業許可とは建設業法第3条に基づく営業許可

建設業許可とは建設業法第3条に基づく営業許可のことです。建設業法は、経済において重要な建設事業を適正に実施させるために制定されました。

建設業法第3条では、軽微な建設工事を除き、建設業の許可を受けなければいけないと定められています。

費用の高い工事を請け負う際に必要な許可です。法人だけでなく個人事業主であっても取得することがあるため、建設業事業を拡大していく人にとっては、必須の許可であると言えます。

  • 国土交通大臣または都道府県知事による許可が必要
  • 軽微な建設工事を請け負う場合に許可は不要
  • 工事の請負金額に基づく建設業許可の種類
  • 建設工事の業種別における種類

建設業許可が必要なケースや注意すべきポイントについて見ていきましょう。

国土交通大臣または都道府県知事による許可が必要

建設業許可は、設ける営業所数・区域によって許可をうける行政庁が異なります。

二つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合は、国土交通大臣の許可を要します。一つの都道府県の区域に営業所を設ける場合は、都道府県知事の許可が必要です。

国土交通大臣二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合
都道府県知事一の都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合

例えば、同一の都道府県内に2つ以上の営業所を設ける場合は、都道府県知事の許可で足ります。一方で、東京本店に加えて、名古屋や大阪に支店を構える際は、国土交通大臣の許可が必要となります。

なお、営業所として認められるには下記の要件を満たさなければなりません。

  • 外部から来客を迎え入れ、建設工事の請負契約締結等の実体的な業務を行っていること。
  • 電話、机、各種事務台帳を備えていること。
  • 契約の締結等ができるスペースを有し、かつ、居住部分、他法人又は他の個人事業主は間仕切り等で明確に区分されているなど独立性が保たれていること。
  • 営業用事務所としての使用権原を有していること(自己所有の建物か、賃貸借契約を結んでいること(住居専用契約は、原則として、認められません。))。
  • 看板、標識等で外部から建設業の営業所であることが分かるように表示してあること。
  • 経営業務の管理責任者又は建設業法施行令第3条に規定する使用人(建設工事の請負契約締結等の権限を付与された者)が常勤していること。
  • 専任技術者が常勤していること。

そのため、単なる登記上の本店や事務連絡所、作業所は要件を満たさないことがあります。あくまでも実体的な業務を行っていることが必須となります。また、専任技術者も営業所に常勤していなければなりません。

建設工事を請け負うことのできる区域において、各行政庁の許可による違いはありません。東京都知事の許可であっても、北海道や大阪で請負契約を締結することは可能です。

軽微な建設工事を請け負う場合に許可は不要

建設業許可は、全ての建設工事に必要なわけではなく「軽微な建設工事の請負」においては不要とされています。

建設業法第3条に基づく「軽微な建設工事」とは、建築一式工事については、1500万円未満または延べ面積が150㎡未満の木造住宅の工事を指します。そのほかの建設工事については、500万円未満を指します。

工事の種類軽微な建設工事の要件
建築一式工事1,500万円未満又は延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事
建築一式工事以外の建設工事500万円未満

なお、500万円未満の工事であっても浄化槽工事業、解体工事業、電気工事業については、各行政庁による登録が必要となります。

  • 契約を分割して請負金額を下げることはできない
  • 無償提供であっても材料費は請負金額に加算される
  • 軽微な建設工事の判断は税込み金額

その他の注意点についても見ていきましょう。

契約を分割して請負金額を下げることはできない

建設業許可の必要可否は、請負金額が500万円を超えるかがポイントとなります。仮に、請負金額を250万円ずつに分割しても建設業許可が必要となります。

建設業法施行令によると、正当な理由に基づく場合のみ契約の分割による請負金額が認められます。

同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。

引用:建設業法施行令第一条の二

建設業許可を回避する目的で、契約分割をし請負金額を低減することは認められていません。

無償提供であっても材料費は請負金額に加算される

注文者が工事の材料を無償提供する場合であっても、材料費は請負金額に加算されます。材料の市場価格と運送費を加算した金額において、建設業許可が必要かどうかが判断されます。

注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。

引用:建設業法施行令第一条の二

基本的に、請負金額を恣意的に減額し、建設業許可を回避することはできないと考えておきましょう。

軽微な建設工事の判断は税込み金額

軽微な建設工事かどうかの判断は、請負契約における税込みの金額で判断されます。

例えば、税抜き460万円の工事は、税込み506万円となるため、工事を請け負う際には、建設業許可が必要になります。消費税の引き上げが行われる際には注意しましょう。

工事の請負金額に基づく建設業許可の種類

建設業許可は、下請契約の工事代金によって「一般建設業」と「特定建設業」の二つに分かれます。業種ごとにどちらかの許可を受けなければなりません。また、必要に応じて一般建設業から特定建設業に変更する「般・特新規」の申請を行います。

一般建設業発注者から請け負った工事代金が4500万円未満の場合(建築工事業は7000万円)
特定建設業発注者から請け負った工事代金が4500万円以上の場合(建築工事業は7000万円)

令和5年1月1日施行の建設業法施行令の一部改正により、工事代金の要件が変更されているため注意しましょう。

  • 一般建設業は金額によっては工事を請け負えない
  • 特定建設業は要件が厳しく取得が難しい

一般建設業と特定建設業の違いは許可要件にあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。

一般建設業は金額によっては工事を請け負えない

一般建設業は、建設工事を下請けに出さない場合や下請けに出す請負の工事代金が4500万円未満(建築工事業は7000万円)の場合に該当する区分です。

特定建設業に比べて、一般建設業は要件を満たしやすいため、許可事業者が多くいます。

特定建設業は要件が厳しく取得が難しい

特定建設業は、発注者から請け負った工事代金が4500万円以上(建築工事業は7000万円)の場合に該当する区分です。

特定建設業の要件は厳しく、専任技術者の資格要件と財産要件を満たさなければなりません。

建設工事は一式工事と専門工事の2種類に分かれる

建設業法において、建設工事は計29種類があります。そのうち「2種類の一式工事」と「27種類の専門工事」の二つに分かれています。

一式工事総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事
専門工事単独で請け負う専門の工事

一式工事は、国土交通省の建設工事の種類によると「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事」とされています。いわゆる大規模で複雑な工事であり、複数の工事の元請けとして統括する役割の業種です。一方で、専門工事は、単独で請け負う工事のことを指し、27種類に分かれています。

  • 2種類の一式工事
  • 27種類の専門工事

業種別の建設工事の詳細について見ていきましょう。

2種類の一式工事

一式工事は、建築一式工事と土木一式工事の2種類に分かれています。

専門工事の種類建設工事の内容
建築一式工事総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事
土木一式工事総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。)

建築一式工事の例は「建築確認を必要とする新築及び増改築」が挙げられます。新築で建物を建てる際には、大工や電気工事、内装工事など多くの専門業者の力が必要となります。

このような複数の業者を一括して統括する役割である建設業者が「建築一式工事」の許可を得ることになります。土木一式工事は、トンネル・ダム・高速道路などの大規模かつ複雑な工事を指します。

また、一式工事は、全ての工事を請け負うことができるわけではない点に注意が必要です。専門工事を請け負う際は、別途その業種の建設業許可が必要となります。

27種類の専門工事

専門工事は、多岐にわたり27種類に分かれています。例えば、大工工事は、木材を加工し壁や床を作ります。

内装仕上げ工事は、クロスの張り替えやフロアタイルを敷いて、仕上がりを綺麗にします。このように建設業は、多くの専門工事によって成り立っています。

専門工事を行うには、業種ごとに建設業許可を取る必要があります。工事の内容によっては、どの専門工事に該当するのか分かりにくいことがあります。許可申請の前に専門家へ確認しておくのがおすすめです。

専門工事の種類建設工事の内容
大工工事木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事
左官工事工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事
とび・土工・コンクリート工事イ 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、工作物の解体等を行う工事ロ くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事ハ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事ニ コンクリートにより工作物を築造する工事ホ その他基礎的ないしは準備的工事
石工事石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事
屋根工事瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事
電気工事発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事
管工事冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事
タイル・れんが・ブロツク工事れんが、コンクリートブロツク等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロツク、タイル等を取付け、又ははり付ける工事
鋼構造物工事形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事
鉄筋工事棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事
舗装工事道路等の地盤面をアスフアルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等によりほ装する工事
しゆんせつ工事河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事
板金工事金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事
ガラス工事工作物にガラスを加工して取付ける工事
塗装工事塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事
防水工事アスフアルト、モルタル、シーリング材等によつて防水を行う工事
内装仕上工事木材、石膏ボート、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペツト、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事
機械器具設置工事機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事
熱絶縁工事工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事
電気通信工事有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事
造園工事整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事
さく井工事整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事
建具工事工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事
水道施設工事上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事
消防施設工事火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事
清掃施設工事し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事
解体工事建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する建設工事
引用:国土交通省

建設業許可の取得には4つの許可要件を備え欠格要件に該当しないことが必要

建設業許可を取得するには、4つの許可要件を満たした上で欠格要件に該当しないことを証明しなければなりません。建設業法第7条及び第8条に規定された厳格な要件のもと建設業許可が認められます。

許可要件建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
専任技術者の設置
誠実性
財産的基礎等
欠格要件破産者で復権を得ないもの等
  • 経営業務の管理責任者の設置が必要
  • 営業所に常勤する専任技術者の設置
  • 不正、不誠実な行為をしない誠実性が求められる
  • 一定の自己資本や資金調達能力を証明する
  • 欠格要件に該当しないこと

建設業許可の要件について詳しく見ていきましょう。

経営業務の管理責任者の設置が必要

経営業務の管理責任者とは、法人においては本社や本店に常勤する役員のことを指します。なお、監査役は管理責任者に含まれません。個人事業主については、経営の管理・執行経験がある本人もしくは支配人が該当します。

建設業を適切に経営するために設けられた厳格な要件であり、下記を満たすことが求められます。

  • 許可を受けたい建設業で5年以上の経営経験がある
  • 許可を受けたい建設業以外で6年以上の経営経験がある

長年の経営経験を有する方がいないと建設業許可の取得はできないことになります。なお、取得したい専門工事の経営経験がなくとも要件を満たすこともあります。

例えば、左官工事の許可を取得する際、大工工事の会社で6年以上の経験がある場合は要件を満たします。

営業所に常勤する専任技術者の設置

専任技術者とは、工事について専門的な知識や経験を有する人のことを指します。建設業では、営業所で見積もり・入札・請負契約の締結が行われるため、許可をうける営業所ごとに専任技術者を設置しなければなりません。

管理責任者は、本店に一人設置するのに対し、専任技術者は各営業所ごとに設置しなければならない点に注意が必要です。専任技術者に該当するかどうかは、一般建設業と特定建設業の区分によって要件が異なります。

一般建設業

一般建設業の専任技術者は、3年または5年以上の実務経験が求められます。

  • 指定学科を修了し高卒で5年以上の実務経験がある
  • 指定学科を修了し大卒で3年以上の実務経験がある
  • 許可を受けようとする建設工事について10年以上の実務経験がある
  • 特定の国家資格者を有する

実務経験を証明するためには多くの資料を集めなければなりません。例えば、業務内容の分かる工事請負契約書・注文書等が必要となります。さらに、管轄する都道府県によって、必要な資料も異なります。

提出書類の多い都道府県の場合、数年分にわたる契約書等を求められることがあります。都道府県ごとに提出書類が異なるため、該当地域を専門とする行政書士に相談するのがおすすめです。

特定建設業

特定建設業の専任技術者として認められる要件は下記のとおりです。

  • 特定の国家資格者を有する
  • 一般建設業の要件を満たし、かつ元請として請負金額4500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する
  • 大臣特別認定者

特定建設業における専任技術者は要件が厳しいため、許可を取ることは難しいといえます。将来的に、特定建設業許可の取得を目指している方は、現時点おいて不足している要件等を

確認しておきましょう。建設業許可専門の行政書士法人では、特定建設業の許可もサポートしています。

専任技術者になれる資格一覧

専任技術者になれる資格は、一般建設業と特定建設業において異なります。例えば、とび・土工・コンクリート工事の場合、一般建設業は「2級建設機械施工管理技士」で足りますが、特定建設業においては「1級建設機械施工管理技士」が必要となります。

建設工事の業種によって、必要な資格は異なるため確認しておきましょう。

不正、不誠実な行為をしない誠実性が求められる

建設業は、他の事業に比べて完了工程までの期間が長く工事費用も高いのが特徴です。

そのため、商取引において、受発注者相互の信頼関係が重要となります。建設業法では、信頼関係の前提となる誠実性を求めています。

法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

建設業法第7条第3号

不正な行為や不誠実な行為とは下記のような行為を指します。

不正な行為請負契約の締結または履行に際して詐欺、脅迫、横領などの法律に違反する行為
不誠実な行為工事内容、工期などについて請負契約に違反する行為

また、不正または不誠実な行為により、免許の取り消しもしくは営業停止処分を受けて5年経過しない者は、誠実性の無い者として扱われます。

一定の自己資本や資金調達能力を証明する

建設工事をするには、多くの資金が必要となります。そのため、建設業を営業するには、一定の財産的基礎を有していることが求められます。

一般建設業においては、自己資本の額が500万円以上必要です。特定建設業は、資本金額2000万円以上、自己資本の額が4000万円以上等の厳しい要件が定められています。

建設業を始める際には、あらかじめ自己資本の用意や資金調達の準備を進めておきましょう。

欠格要件に該当しないこと

建設業許可における欠格要件は、平成27年4月1日の暴力団排除の徹底を目的とした改正以降に施行されています。建設業法第8条、同法第17条(準用)によると、14のケースに該当すると建設業の許可は行われません。

主な欠格要件は下記のとおりです。

  • 破産者で復権を得ないもの
  • 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者

許可を受けた後に、欠格要件に該当することが判明した場合、許可取り消し処分を受ける可能性があります。また、欠格要件に該当しないことの証明は「誓約書」「登記されていないことの証明」「身分証明書」によっておこなわれます。

建設業許可申請の流れ

建設業許可申請の全体の流れをご紹介します。一般的に行政書士に建設業許可申請の相談をしてから2~3か月後に許可の取得ができます。時間のかかる手続きのため早めに準備をしておきましょう。

  1. 取得する許可の種類を確認
  2. 必要書類の収集と申請書類の作成
  3. 申請書への押印
  4. 行政庁への申請
  5. 本審査
  6. 許可証の受領

それぞれのポイントについて見ていきましょう。

許可の種類を確認

建設工事の種類によって、必要な許可が異なります。一式工事と専門工事のどちらが必要になるのかを確認しましょう。また、許可の種類によって要件も異なります。特に、専任技術者等の人的要件を満たすかの確認が重要です。

必要書類の収集と窓口への提出

許可要件を満たすための必要書類を全て取り揃えていきます。書類の中には期限が設けられているものもあります。また、特に実務経験を証明する資料の用意が難しく、申請を断念することも珍しくありません。

申請前には、都道府県のホームページに掲載されている手引き等を確認し、必要書類の最終確認をしましょう。書類を揃える順番にも注意が必要です。書類に不備があると、申請が受け付けられず許可取得までにさらに時間がかかってしまうことがあります。

行政庁への申請と本審査

行政庁へ申請を行い本審査を受けます。不備が無ければ、都道府県知事による許可は約1~2か月、国土交通大臣による許可は約3か月で許可がおります。

許可取得後に、申請した住所へ「許可通知書」が送付されます。自治体によっては、直接取りに行かなければなりません。都道府県によって、全体の流れが多少異なるため手引きを確認しておきましょう。

建設業許可申請にかかる費用は5~30万円

建設業許可申請にかかる申請手数料の費用は、おおよそ5~30万円です。

申請区分 許可区分 一般・特定 申請手数料
新規申請 大臣許可 一般・特定のどちらかを申請 15万円
一般+特定の両方を申請 30万円
知事許可 一般・特定のどちらかを申請 9万円
一般+特定の両方を申請 18万円
許可換え新規申請 大臣許可 一般・特定のどちらかを申請 15万円
一般+特定の両方を申請 30万円
知事許可 一般・特定のどちらかを申請 9万円
一般+特定の両方を申請 18万円
般・特新規申請 大臣許可 一般・特定の受けていない方を申請 15万円
知事許可 一般・特定の受けていない方を申請 9万円
業種追加申請 大臣許可 一般・特定のどちらかを申請 5万円
一般+特定の両方を申請 10万円
知事許可 一般・特定のどちらかを申請 5万円
一般+特定の両方を申請 10万円
更新申請 大臣許可 一般・特定のどちらかを申請 5万円
一般+特定の両方を申請 10万円
知事許可 一般・特定のどちらかを申請 5万円
一般+特定の両方を申請 10万円

知事許可における申請手数料の支払い方法は、現金納付もしくは県証紙の貼付です。申請先の都道府県によって、異なるため事前に確認しておきましょう。

県証紙は、県民センターや警察署等で購入できます。建設業許可の申請先窓口では購入できないこともあるため注意が必要です。なお、大臣許可については、収入印紙もしくは登録免許税の納入となります。

建設業許可は複雑で申請が難しいため行政書士へ依頼する

建設業許可は、個人でも申請できるため建設業法に知見のある方は、本人申請をするのもおすすめです。

しかし、建設業の申請手続きを詳しく把握している方は少ないのが現状です。建設業許可は、申請内容が特に複雑なため、初めての方は手続きに戸惑ってしまいます。また、誤った種類の許可を取得してしまうと、本来予定していた工事ができなくなるリスクもあります。

複雑な申請手続きは、専門家の行政書士に任せて、本業の建設業に時間を使うのがおすすめです。

行政書士に依頼すると、行政書士報酬が発生しますが、手引書を読み込む時間や不許可になる可能性を考慮すると、専門家に依頼するのがおすすめです。

建設業専門の行政書士であれば許可の取得だけでなく、「資金調達」「補助金・助成金」といった経営のサポートまで対応してくれることもあります。行政書士法人GOALでは、各種経営サポートにも対応しています。

行政書士に依頼した際のサポート料金は10~20万円

建設業許可を行政書士に依頼すると概ね10~20万円のサポート料金がかかります。必要書類が多く難易度の高い許可は、金額が高くなる傾向にあります。

例えば、行政書士法人GOALでは、ケース別に3種類の金額目安をご案内しています。

パターン料金目安ケース
A10万円経営業務の管理責任者に就任する人が、建設業許可が「ある」会社で取締役を5年以上又は6年以上経験があり、 専任の技術者に就任する人が国家資格者のケース。
B13~18万円経営業務の管理責任者に就任する人が、建設業許可が「ない」会社で取締役を5年以上又は6年以上経験があり、 専任の技術者に就任する人が国家資格者のケース。
C15~20万円経営業務の管理責任者に就任する人が、建設業許可が「ない」会社で取締役を5年以上又は6年以上経験があり、 専任の技術者に就任する人が「10年以上の実務経験」を証明しなければならないケース。

建設業許可にかかる費用や申請手続きに関して、ご不明な点がある方はご相談ください。

建設業許可申請に関するよくある質問

最後に、建設業許可申請に関するよくある質問をまとめてご紹介します。

  • 建設業許可を取らずに営業をすると罰則や罰金がある?
  • 建設業許可は自分で申請できますか?
  • 建設業許可は資格がなくても取れますか?

建設業許可の申請をする前に確認しておきましょう。

建設業許可を取らずに営業をすると罰則や罰金がある?

建設業法第47条によると、建設業許可が必要な工事を無許可で行った場合「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます。

罰則や罰金刑によって、建設業許可の欠格要件に該当する結果、許可が取り消される可能性があります。また、建設業許可が取り消されると5年間は新たに取得することはできなくなります。

建設業許可は自分で申請できますか?

建設業許可は自分で申請できます。管轄する都道府県のホームページで「建設業許可申請・届出の手引き」を確認できます。詳細を確認してご自身で必要書類を集めて申請しましょう。

必要書類の集め方が分からない場合や手続きに不安のある方は、建設業専門の行政書士法人に依頼するといいでしょう。

建設業許可は資格がなくても取れますか?

建設業許可は、資格が無くても相応の実務経験があれば取得できます。実務経験を証明するために、工事請負契約書・注文書等を集めなければなりません。

提出先の都道府県によっても、必要な書類は異なるため各都道府県に問い合わせてみましょう。

建設業許可後にしなくてはいけないこと【業種追加】

許可後にしなくてはいけないことではありませんが、必要に応じて手続きが必要な申請です。

業種追加とは?

建設業許可は29業種それぞれで許可が必要になります。

もともと建設業許可が不要な工事しかしていなかった、専任の技術者等の要件が足りなかった為取得できなかった等、理由は様々です。
当初は取得していなかった業種を追加したい場合には「業種追加」という手続きが必要になります。

一般建設業許可を受けている場合は、追加できるのは同じく一般建設業のみとなり、特定建設業許可を受けている場合、追加できるのは特定建設業のみとなります。
もし一般許可を受けている業者が特定許可の申請をする場合やその逆の場合は、般・特新規という別の手続きになります。

業種の追加をする場合は、その業種を追加することができるだけの要件が満たされているか必ず確認をしましょう。
建設業許可を取得するための必須条件とは?

なお、一般建設業許可を取得してからまだ一度も更新をしていない場合の業種追加は財産要件も満たしている必要があります。建設業許可を取得するための財産的な基礎とは?【一般建設業編】
特定建設業許可で業種追加の場合も財産要件を満たしている必要があります。建設業許可を取得するための財産的な基礎とは?【特定建設業編】

業種追加の手数料

業種追加をする場合の手数料は、1回につき5万円です。これは追加する業種の数に係わらず5万円です。
例えば、一般建設業許可の業種追加と特定建設業許可の業種追加を同時に行う場合は、それぞれ5万円で計10万円の手数料になります。

許可の1本化

業種追加をした場合、元々の建設業許可と許可番号は同じですが、許可有効期限が異なります。
例えば、元から取得している有効期限がH27.4.1~H32.3.31の一般建設業許可と、新たに追加した有効期限がH28.6.1~H33.5.31の一般建設業の許可の2つが存在することになります。
この場合、H32年の更新とH33年に更新がそれぞれ発生することになります。
こうなると許可期限の管理も手間になりますし、更新申請の準備や更新手数料が2回分発生することになってしまいます。

これを1つにまとめる方法が「許可の1本化」です。

先に有効期限が来るH32年の更新の時に、H33年更新分もまとめて更新することができます。
1つにまとめることで許可期限の管理や更新の申請が1回で済ませることができようになります。

建設業許可後にしなくてはいけないこと【建設業者票の掲示】

建設業許可通知書が届き、晴れて建設業者の仲間入りをしたら、まずやらなくてはいけないのが建設業者票の準備です。

まずはどのようなものか見てみましょう。

建設業者票とは

建設業者票は、営業所に設置するものと工事現場に設置するものがあります。
営業所に設置されているものは、「金看板」と呼ばれていることが多いようですね。必要事項さえしっかり記載されていて、大きさ等の規定通りであれば金色の看板にこだわることはありません。
様々なデザインの看板がありますので、お好みでお選び下さい。

一方、工事現場に設置するものは、皆さんもよく工事現場等で掲示されているのを見かけると思います。
こちらは現場ごとに掲示するため、裏面がマグネット式になっているものを使用される建設業者が多いですね。

(東京都手引きより引用)

まとめ

建設業者票は、許可通知書が届いたらご自身で作成をします。
許可行政庁から送られてくるものではありませんので、ご注意下さい。

建設業許可後にしなくてはいけないこと【許可の更新】

建設業許可は取得したらそれで終わりではありません。
毎年の決算報告や、変更事項の届出、5年毎の更新があります。

建設業許可の更新

建設業許可の有効期限は5年となっています。建設業者が継続して許可を受けるには、5年毎に更新の申請が必要となります。
更新の申請は、知事許可で有効期限60日前から30日前まで、大臣許可は6ヶ月前から90日前までとなります。

許可の有効期限が切れてしまったら、更新は一切受け付けしてもらえなくなってしまい、一度廃業をして新たに許可を取り直さなければならなくなります。
そうなると、許可番号の変更が発生したり、もう一度新規申請の必要書類を集めなくてはいけません。

許可通知書に記載されている有効期限をしっかり確認し、遅れることなく更新申請ができるようご注意下さい。

更新手数料

知事許可:5万円

大臣許可:5万円

※一般建設業と特定建設業両方の更新をする場合は、10万円

更新の際に、業種追加の手続きや一般建設業から特定建設業に切り替えを行う等、更新と組み合わせて申請をすることも可能です。
手数料については予め確認をしましょう。

建設工事の請負契約書について

建設工事を請負った場合、請負契約書を作成する義務があります。
書面による契約は、元請・下請・請負金額に係わらず、全ての工事が対象になります。

請負契約書に記載しなければならないこと

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払いの定めをするときは、その支払の時期及び方法
  5. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  6. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  7. 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  8. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  9. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  10. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡の時期
  11. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  12. 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  13. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  14. 契約に関する紛争の解決方法

これらの事項が記載された契約書には、署名又は記名押印をしてお互いに交付しなければなりません。

契約の方法

請負契約にはいくつか方法があります。

  1. 工事毎に請負契約書を交わす
  2. 基本契約書を交わした上で、個別の工事については注文書+注文請書を交わす
  3. 注文書+注文請書に、あらかじめ同意した内容の基本契約約款を添付する

原則としては書面での交付となりますが、双方の合意がある場合には情報通信の技術を利用した措置(電子契約)もOKとなっています。
その場合は以下の留意事項にご注意下さい。

1 採用する電磁的措置の種類及び内容について相手方の承諾を得ること
2 採用する電磁的措置が、以下の基準を満たすものであること
①当該契約の相手方ガファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること
②ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること
※公開鍵暗号方式による電子署名、電子的な証明書の添付、電磁的記録等の保存が必要な措置となります。

電子契約のメリット

電子契約を導入する一番のメリットは、なんといっても印紙税の削減でしょう。
電子契約の場合、課税対象とはならないため、契約書が多い建設業界では大幅な印紙税の削減となります。

また、契約書の印刷、郵送、管理等事務的な処理が減りますね。
契約書のやり取りはインターネットを通じて行うことになりますので、郵送の手間が省け、管理もパソコン上で行えば保管もラクですね。
日付、契約先、金額などのキーワードでの検索も簡単になるので、会計処理や税務管理などにも正確に対応できるようになります。

導入をご検討の際は、ご相談下さい!

工事現場に配置する技術者

建設業許可を受ける際に、専任の技術者が常勤でいることというのが許可を受ける条件の1つになっています。
この専任の技術者の他に、工事現場に配置する義務がある技術者について確認してみましょう。

工事現場に配置する義務がある技術者

建設業法第26条第1項・第2項によると、

第26条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
このように規定されています。

主任技術者とは?

建設業許可業者が工事を行う場合、元請・下請・請負金額に関係なく工事現場での工事の施工の技術上の管理をする者として、主任技術者を配置しなくてはいけません。
主任技術者になるための条件は、専任技術者の条件と同一です。(第26条第1項)

監理技術者とは?

発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額の合計が4,000万円以上(建築一式工事の場合は、6,000万円以上)となる場合には、特定建設業許可がなくてはならず、主任技術者に代えて監理技術者を配置することになります。

監理技術者とは、1級の国家資格を持っている者や、一定の実務経験を持つ者が監理技術者講習を修了することによって与えられます。
監理技術者について(一般社団法人建設業技術者センターHPより引用)

専任の技術者と主任技術者・監理技術者の関係とは?

営業所の専任の技術者は、「営業所に常勤して専らその職務に従事すること」が求められています。
要するに、現場には行かずに社内にいなければならないということです。

とはいえ、昨今の人材不足等の状況を加味して、特例として以下のような条件が揃っていれば、専任の技術者であっても現場に出てOKとなります。

  1. 当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること
  2. 工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間でじょうじ連絡を取りうる体制にあること(工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度であること)
  3. 所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
  4. 当該工事の専任を要しない監理技術者等であること

 

くれぐれも専任の技術者が遠方の現場に主任技術者や監理技術者として行くことがないよう、十分注意して下さいね!

意外と難しい機械器具設置工事業

建設業許可業種の中に、「機械器具設置工事業」というのがあります。

この業種がなかなか複雑で、単純に機械を設置する工事全てが該当する訳ではないのです。

機械器具設置工事とは?

どのような工事が該当するかといいますと、

  • プラント設備工事
  • 運搬機器設置工事
  • 内燃力発電設備工事
  • 集塵機器設置工事
  • 給排気機器設置工事
  • 揚排水機器設置工事
  • ダム用仮設備工事
  • 遊技施設設置工事
  • 舞台装置設置工事
  • サイロ設備工事
  • 立体駐車設備工事

等が該当となります。

さらに国土交通省が発表している工事の考え方を示すガイドラインによると、

  • 『機械器具設置工事』には広くすべての機械器具類の設置に関する工事が含まれるため、機械器具の種類によっては『電気工事』、『管工事』、『電気通信工事』、『消防施設工事』等と重複するものもあるが、これらについては原則として『電気工事』等それぞれの専門の工事の方に区分するものとし、これらいずれにも該当しない機械器具あるいは複合的な機械器具の設置が『機械器具設置工事』に該当する。
  • 「運搬機器設置工事」には「昇降機設置工事」も含まれる。
  • 「給排気機器設置工事」とはトンネル、地下道等の給排気用に設置される機械器具に関する工事であり、建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は『機械器具設置工事』ではなく『管工事』に該当する。
  • 公害防止施設を単体で設置する工事については、『清掃施設工事』ではなく、それぞれの公害防止施設ごとに、例えば排水処理設備であれば『管工事』、集塵設備であれば『機械器具設置工事』等に区分すべきものである。

とあります。

ある審査官の話だと、「いくつかの複雑な工程を専門的な知識を持って、現場で組み立て・取り付けをし、単体では使用することができないものであって、その他の専門工事に該当しない工事」ということでしたが、例えば、大型機械で現場で組み立てるタイプのものであっても、単体で使用することができるものは、とび・土工・コンクリート工事業の重量物の揚重運搬に当たるため、機械器具設置工事業としては認められないということになります。

建設業許可を取得していない会社等での実務経験を証明する場合、証明資料として通常は工事請負契約書や注文書等を必要年数分用意します。
ですが、機械器具設置工事業に関しては、工事が機械器具設置工事に該当するかを確認するために工事の図面や工程表等を追加で求められます。
ここで機械器具設置工事と認めてもらえなければ、実務経験として証明することができないということになります。

機械器具設置工事業の専任技術者になれる資格とは?

機械器具設置工事業の専任技術者になれる資格は、以下の通りです。

  • 技術士法 機械・総合技術監理(機械)
  • 技術士法 機械「流体工学」または「熱工学」・総合技術監理(機械「流体工学」または「熱工学」)

この2つのみです。
他の業種には、施工管理技士の資格や技能検定等がありますが、機械器具設置工事業に関しては、実務経験以外では技術士試験にパスした人だけが専任技術者になることができます。
実務経験者でも証明ができれば専任技術者になれますが、先述した通り証明が難しいことがあります。

専任技術者についてはこちらをご確認下さい。

専任の技術者になるには?【一般建設業許可の場合】

専任の技術者になるには?【特定建設業許可の場合】

建設業許可 専任の技術者の必要書類【実務経験者・東京都編】

建設業許可 専任の技術者の必要書類【実務経験者・神奈川・千葉・埼玉編】 

 

機械器具設置工事業は他の専門工事に分類されることが多く、その判断は非常に難しいことがあります。申請前に事前に都道府県にご相談されることをおすすめします。

経営事項審査 技術職員と資格について

経営事項審査は、経営規模、技術力、社会性、経営状況を総合的に判断し、その結果が点数となるいわば会社の通知表のようなものです。

今日はその中でも25%を占める技術職員数及び元請完成工事高の中の「技術職員」についてお話したいと思います。

技術職員数とは?

経営事項審査(略して「経審(けいしん)」)における技術職員数は、いわば技術力を評価するための項目です。

常勤している資格保有者や実務経験者の人数を評点に反映させています。当然、実務経験者より有資格者の方が評点が上がります。
1級の国家資格者の中でも監理技術者講習を受けている者は、さらに加点の対象になります。

常勤していることが評価される前提となりますので、常勤性の確認のための資料の提示や提出が必要となります。
建設業許可では、申請の時点で常勤性が担保されていれば良しとされていますが、経審では「審査基準日(決算日)以前に6ヶ月を超える恒常的雇用関係があり、かつ、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者」に限定されています。
例えば、3月決算の会社の場合、9月29日よりも前に採用されていて、雇用の期限がない人が対象になります。
したがって、アルバイトや派遣社員・契約社員は技術職員になることができません。

一方、出向社員や定年後の継続雇用制度の適用者は技術職員として評価を受けることが可能です。
出向社員の場合は、出向契約書や出向元での常勤性が証明できる資料等で常勤性が確認できれば評価対象となります。
定年後の継続雇用制度の適用者は1年ごとの契約更新があっても、継続雇用制度を定めた就業規則と継続雇用制度適用者名簿等を提出(提示)することで評価対象となります。

1人の技術職員に対して、加点の対象となるのは2業種に限られます。ですから、1人の技術職員がいくつもの国家資格を持っていても、評価の対象にできるのは2業種に制限されますので、どの業種をカウントの対象にするかを事前にシュミレーションをして対象にする2業種を決定することになります。

経審の技術職員と建設業許可の専任技術者・主任技術者(監理技術者)の違い

経審の技術職員は出向社員であっても加点の対象になりますが、建設業許可では出向社員は専任技術者になることはできますが、現場に配置される主任技術者(監理技術者)は出向社員不可となっています。
経審の技術職員名簿に名前を載せているからといって、出向者を主任技術者(監理技術者)に配置してしまうと処分の対象となってしまいますのでご注意下さい。

技術職員の配点

  • 1級資格者でかつ監理技術者講習修了者・・・・・・・・・6点
  • 1級資格者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5点
  • 基幹技能者講習修了者で1級資格者以外の者・・・・・3点
  • 2級資格者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2点
  • その他技術者(実務経験者等)・・・・・・・・・・・・・・・・・・1点

技術職員コード表(一般社団法人建設業情報管理センターのHPより引用)

評価を上げるためには

技術職員の人数が多ければ、それだけ評価は高くなります。
ですが、技術職員の配点を見ると分かるように、持っている資格等によって配点が変わります。
1級資格者であれば、監理技術者講習を受講することで1点上がりますし、2級資格者が基幹技能者講習を受講することで1点上がります。
実務経験者も積極的に資格を取得することで点数アップに繋がります。

厚生労働省では建設業の資格取得のための助成金が複数あります。それらを活用し人件費を増大させることなく経審の評価を上げてみてはいかがでしょうか?

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